2021年5月25日火曜日

祖母の話

私の祖父母は父方の祖母を除いて、早くに亡くなっているので、「おじいちゃん・おばあちゃん」との交流というのはこの父方祖母だけになります。 祖母は当時日本が植民地としていた台湾に、台湾鉄道の車掌の娘として生まれ、終戦まで台北、高雄で少女時代を過ごしました。 日本が太平洋戦争に突入してからは、台湾歩兵連隊に動員され、当時の上司は、後藤田正晴中尉(のちの田中角栄内閣での官房副長官)と聞いています。 日本が敗戦すると本土に引き揚げることになりますが、当然敗戦国側である日本人の引き揚げは容易なものではなく、略奪なども行われていました。 その時に、台湾人の豆腐屋の親父さんが、引き揚げまでの手引きをしてくれるなどして助けてくれたそうです。その親父さんは、実は蒋介石軍の諜報部員だったそうですが、懇意に付き合いがあった祖母一家を助けてくれました。 その後、本土の土を生まれて初めて踏んだ祖母は、同じく満州からの引き揚げ組である祖父と知り合い結婚しました。 この話を聞いたのは中学生の頃で、当時は映画のような話だなあと思ったのですが、当然ながら祖母の少女時代は壮絶そのものでした。 そんな祖母も享年92歳で亡くなりました。 私にとっては、とても優しい祖母で遊びに行ったら、なかなか握った手を離してくれませんでした。 生前、台湾にもう一度行きたいと言っていた祖母の夢が叶わなかったことは残念ですが、コロナが明けたら祖母の軌跡をたどりに台湾に行きたいと思います。

2020年11月3日火曜日

国際人権法連続講座「だいじょうぶなの?入管!」

昨日11月2日は、大阪弁護士会主催の「市民、弁護士のための国際人権法連続講座/日本における外国人と国際人権法/だいじょうぶなの?入管!〜違反だらけの入管収容〜」を受講しました。もちろん、オンライン受講です。 とてもためになりました。私自身、入管との直接のやりとりはビザの取次申請くらいにはなりますが、過去に刑事裁判において、難民であることを争ったこともあり(難民であることが認められた場合、オーバーステイ等を理由とする刑は免除されます)、非常に関心の強かった講座でした。 現在の入管行政、そして裁判所は国際自由権規約を無視した運用・認定になっています。 いくつかある原因として、40年以上前の入管に幅広い裁量を認めたマクリーン判決や入管職員の意識(日本にふさわしい外国人のみを日本に残す)によるところが大きいそうです。私もそう感じました。 思うのは、現在の入管行政、そしてその後の裁判所の判断って、本当にちゃんとした根拠に基づいて行われてないということです。 裁判所は、かなり広い裁量論で、右から左に流しているのに変わらない。でも本当は国際人権規約が条約として批准しているわけですから、出入国管理および難民認定法の解釈にあたっては、上位法の国際自由権規約を踏まえた審理をしなければならないが、ほとんど無視した状態になっているのです。 「最高裁が変わらないと入管は変わらない」 国連への個別通報制度をきちんと活かして、最高裁判所の考えを変えさせる。 大変勉強になりました。

2020年9月1日火曜日

通訳人問題

 今日から9月になりました。

今年も残り4ヶ月ですがコロナ禍で人々の行動が制限された日々が未だに続いております。

このコロナの影響で、日本での在留資格を有する外国人が再入国する場合の入国拒否が問題となっていましたが、先月28日に、出国日にかからわず再入国が原則として認められるようになりました。

わが国の在留外国人の数は過去最高を記録しており、今後は一層、在留外国人をユーザーとしたサービスを幅広く構築していかなければならないと思います。

司法もその例外ではありません。外国人が司法制度、とりわけ訴訟を提起しようと考えたとき、通訳人の存在が非常に重要となります。

すなわち、日本語が堪能な外国人であれば、弁護士と十分にコミュニケーションをとることができますが、そうでない場合、通訳人による通訳がなければ、法律相談からつまづいてしまうからです。

司法における通訳人問題は、以前から問題視されていました。

第一に、「司法通訳人」といった国家資格が存在しないという点です。

現在、裁判所では、裁判で通訳人が必要となった場合には、法廷通訳人名簿に基づいて選任していますが、その能力が必ずしも国家資格によって担保されていません。

もちろん、研修制度はありますし、優秀な通訳人の先生もおられますが、諸外国に比較するとやはり国家資格化していない日本は遅れていると思います。


第二に、通訳人費用をどうするかという点です。

一つの例を考えてみたいと思います。

飲食店で働くネパール人男性Aさんが熊本にいるとします。

Aさんは、日本に来て2年ほどで、日本語もあまり得意ではなく、ネパール語しか話せません。そんな彼が、残業代を支払ってくれない飲食店に対し、残業代請求を行うため原則3回の期日で終了する労働審判を提起しようと考えてます。

このとき、Aさんには通訳人が必要となりますが、そのためには裁判所に法廷通訳を依頼するか、自力で通訳人を探すしかありません。

しかし、ネパール語の通訳人は熊本にはほとんどいないため、裁判所に法廷通訳を頼むことにしました。すると、裁判所の名簿では、ネパール語の通訳人は関西にしかいないことがわかりました。

このような場合、通訳人の通訳料だけではなく、旅費もAさんが負担することになります。

そうなると、Aさんは、労働審判という司法サービスを受けることができないという結果が生じるのです。

この問題は、一見すると通訳料を誰が負わなければならないものかという問題のようですが、本質は、通訳人のアクセスのしにくさにあるように思います。

通訳料は、司法サービスによる利益を享受しようとするAさんが負わなければなりませんが、通訳人の旅費まで負担しなければならないのかは別議論だと思うからです。

「日本に来る以上は、日本語を話せるようになってからでないと来てはならない」という主張は、ある意味では正しく聞こえますが、社会はそのようにできていません。

日本語ができない在留外国人は想像以上に大勢いるのです。

日本語が話せる者も話せない者も自らの権利の救済や実現のため司法サービスを等しく利用できなければ、日本の国際化は遅れるばかりでしょう。


(追記)

出入国在留管理庁への申請取次も行っておりますので、ビザ申請のご依頼をお考えの方はご連絡ください。

2020年4月24日金曜日

マスクとカレー

コロナ禍の中、最前線で闘われている医療従事者の方々には頭が下がります。
司法界はというと、緊急事態宣言を受けて、熊本の期日も緊急性の高い事件を除き、全て中止となり、次回期日は未定のままです。

さて、感染予防には3密を避けるというのはもちろんですが、マスク着用、手洗いうがいが基本です。
私はマスクを着用すると太りすぎのせいかすぐに息切れをおこしてしまうのとメガネが曇ってしまうため、マスクはどちらかというと苦手でした。
しかし現在ではそんなことも言ってられず、私よりも周囲の方に迷惑がかかることからマスク着用を心がけています。

とはいえ、マスクが手に入りづらくなっていたりネットで購入するにしても高いわけですから、マスクの入手には一苦労です。

そんな中、街中で飲食店さんがマスクを販売してました。
値段は4000円ほどでしたが、インターネット通販などしたことがない両親のためにマスクを買っていこうと思い、店内に入るとスパイシーな香りがします。
店員さんが
「マスクを購入された方にはカレーを無料でお付けします」との一声にお昼をすでに済ませた私は断ろうか悩みましたが、ありがたくいただくことにしました。

「いま世の中に最も需要のある一つにお店のアピールポイントを付加価値としてつける」
ということだろうかと思いながらカレーを美味しくいただきました。

2019年12月20日金曜日

相続の3ヶ月ルール?!

昨日のNHKのビジネス特集「知らないと大変なことに!相続の3ヶ月ルールって?」の放送をご覧になられた方もいらっしゃるかと思います。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191218/k10012219631000.html

いま全国で問題になっている空き家問題(朽ちた空き家が通行者や近所の迷惑になっているが、所有者不明のため行政も対処できない)とも関連していますが、長い間連絡を取っていなかった親族の財産を突然相続することになったら・・・というのがこの放送のテーマでした(私も全部は見ていないためおそらくそういうことなのだろうと思います)。
相続するって得しかないと思われがちですが、もちろん借金などのマイナスの財産も相続の対象となる「財産」となりますし、それこそ廃墟と化した空き家を相続するとなったら、多くの解体費用を負担するの?!となってしまいます。

そこで登場するのが

相続放棄

という手続です。
これは「相続の開始があった」ことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続をすれば、相続しなくて大丈夫!という制度です。
相続の開始があった」というのは、一番わかりやすいのが亡くなったことを知ってからという場合。
この3ヶ月という期間は思いの外短く、事前に延長の手続も取ることができますが、気付いた時には3ヶ月経過していた・・・ということもままあります。
これがいわゆる「3ヶ月ルール」です。

同番組では、法律相談で、離婚した父の住んでいた空き家を相続したという女性が弁護士から、この3ヶ月を経過したために放棄できなかったという事例が紹介されていました。

具体的な事情等がおありと思いますが、亡くなったことを知ってから3ヶ月を経過しても、「相続する財産って何もないわよね・・・」と信じた場合には、マイナスの財産があるということを知ってから3ヶ月以内に相続放棄をすれば、認められる場合があります。

半年前に音信不通の親族が亡くなったことを知ったけど、特に相続するものもなかったので放置していたが、突然、消費者金融から延滞していた借金を請求された場合を想定してみましょう。
この場合、音信不通の親族の様子など知るよしもありませんから、相続する財産などないと思っても不思議はありません。
そうすると、消費者金融から請求が来た時に初めて
「あ、この故人(ひと)借金作ってたのね・・」
となるため、その請求が来たときから3ヶ月以内であれば相続放棄ができる可能性があります(最高裁第二小法廷昭和59年4月27日判決)。


もう今年も終わりです。月日の経つのは早いものですが、亡くなったことを知ってから3ヶ月経っても、
諦めよう・・・
と思わず一度ご相談に来られてはいかがでしょうか。

2019年11月25日月曜日

事務所の看板がリニューアルしました

前回から4ヶ月も空いておりましたが、今回はお知らせです。
事務所の看板がリニューアルしました。
暖色系のオレンジと白を基調としたデザインで、フォントも優しい雰囲気になりました。
駐車場にも大きめの看板を立てましたので、お車でお越しの方も一目瞭然!!
となってほしいです。
みなさまにお気軽にお越しいただけるような事務所づくりを目指しますので今後ともよろしくお願いいたします。

△駐車場看板 



△入口看板 夜でも見やすいLED仕様

2019年7月29日月曜日

クライマーズ・ハイ

私の好きな映画の一つにクライマーズハイという映画(2007年)があります。
横山秀夫原作で、横山氏が新聞記者時代に遭遇した日航機123便墜落事故が題材となっています。
(あらすじ)
1985年8月12日、乗員乗客524名を乗せた日航機123便が、群馬と長野の県境に墜落、その一報が北関東新聞社に入る。編集部で全権デスクに任命された悠木和雅(堤真一)は記者として扱う一大ニュースに対する興奮を禁じえないが、中央紙とのスクープ合戦や組織や家族との衝突を経て、命の重さに対しわき上がる使命感を覚える(引用元:シネマトゥデイhttps://www.cinematoday.jp/index.html

映画の終盤、事故の原因が「圧力隔壁の破壊」というスクープをどの新聞社よりも早く手に入れた悠木は、「Ace in the Hole」という、カーク・ダグラス演じる小さな新聞社の初老の編集長の言葉「チェック、ダブルチェック」という言葉を呟きながら、このスクープの裏を取れたのかどうか、記事にすべきかどうかを悩みます。

ここからは個人的な感想ですが、この「チェック、ダブルチェック」という言葉と「クライマーズ・ハイ」という映画のタイトルがとてもうまくリンクしていると感じます。
クライマーズ・ハイという言葉は、ランナーズ・ハイと同様、登山者が、登山中にその疲労感を忘れるほど気分が高揚してくる状態のことを言うらしいのですが(不正確でごめんなさい)、この状態の登山者はスイスイと登って行ってしまうのと同時に、滑落の危険性が高くなります。
「スクープ記事をすっぱ抜ける!」という高揚感のあまり、記者として鉄則の「裏取り」をせず、誤報を飛ばすことだけはしない。。。「クライマーズ・ハイ」という映画は、熱気溢れながらも事故により疲労困憊した記者デスクの中で繰り広げられるプロ同士の人間模様をよく描いており、邦画の中でも私の一番好きな映画です。

弁護士としても、困難事案に遭遇した時、状況を打破できる一筋の光が見えるときがありますが、その時には「ダブルチェック」。飛びつかずにもう一度、理屈を再構成することが大事ですね。

2019年7月20日土曜日

労働法研究会

今日も雨です。
本日は、定期開催される労働法研究会のため熊本大学に来ております。
当事務所の髙島弁護士がプレゼンターとして労働災害の職務起因性をテーマに発表を行っております。
こういった会に参加することは、理論的な知識を補う、他の弁護士がどのような労働問題に取り組んでいるのかを知ることができる、という自身の鍛錬にも大変役に立つものです。
そして何よりも研究者の先生方が、実務家にはない視点からのフィードバック、アドバイスをいただける貴重な場でもあります。



2019年6月3日月曜日

R1

更新が大変遅れていましたが、やはりまだ平成が抜けきれてません。
メモを取る時に、よく日付を書くのですが、元号をよく省略して書きます。
例えば、平成であれば H30.6.3というように。
令和になると、アルファベットではRなので、令和元年はR1となります。
私はどうしてもこのR1というのがしっくりこないのですが、今さら西暦に変更して2019.6.3とするのも気持ちが悪いです。

とはいえ、R12とかR8と1以外の数字を書いてみると特に違和感を覚えません。
しっくりこないのは1の方だろうと思いましたので、元にしてみるとどうでしょうか。

R元.6.3

脳トレ的な暗号が出来上がったような気がします。
でも平成元年の時はどうだったのだろうと想像すると、

H1.6.3

となり縦棒が並びすぎて、気持ち悪いと思い、元にしてみると、

H元.6.3

となりますね。
もはやどっちでもよくなってきました。

2019年2月1日金曜日

春よ来い

年末からの咳が止まらずに、インターネットで咳ぜんそくという名前を見て震えております。
寒くなると私は咳が出やすいのですが、一番ひどかったのは、司法試験を受験する年の冬でした。咳き込みすぎによる嗚咽で、いつも涙目でした。
暖かくなると自然と咳はおさまってくるので、早く春がきてほしいと願っています。

そういえば小学校の先生が、年度末の修了式を迎えるにあたり、「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」と、4月までの時間の経過の早さを例えていました。
しかし、もう小学生ではないので、特に4月からも忙しく感じます。


2019年1月22日火曜日

平成最後の・・・

謹んで初春のお慶びを申し上げます。
平成も残すところあと5ヶ月くらい?でしょうか。
平成最後の・・・と言われることも多いですが、ことあるごとに「平成最後の・・・」という言葉が乱立するであろう平成最後の1日は、やかましいでしょうね。
裁判で提出する書面に記載する日付は、元号をよく使いますが、去年から平成最後の・・・という言葉を聞きすぎて、「平成31年」と書くたびに、何故か哀愁というか、切なさを感じるのです。
おそらくみなさんも同じように思っていて、年が明けても「平成30年」と書き間違える書面に出くわします。
しかし、よくよく考えてみれば、平成という元号によって時代が区切られるだけなので、元号が切り替わってもなんにも変わっていないじゃないのかと。
それでも「平成」という言葉に特別の感情を抱くのは、戦争と復興の「昭和」から「平成」へという時代の移り変わり、バブルが弾けてどこか元気のない雰囲気だった社会の中にもテクノロジーやサブカルチャーの目まぐるしい発展があって、私は、その空気感がとても好きだからだと思うのです。
でも、どちらかといえば、私は「平成」というより「90年代」が好きでした。



祖母の話

私の祖父母は父方の祖母を除いて、早くに亡くなっているので、「おじいちゃん・おばあちゃん」との交流というのはこの父方祖母だけになります。 祖母は当時日本が植民地としていた台湾に、台湾鉄道の車掌の娘として生まれ、終戦まで台北、高雄で少女時代を過ごしました。 日本が太平洋戦争に突入し...