今日から9月になりました。
今年も残り4ヶ月ですがコロナ禍で人々の行動が制限された日々が未だに続いております。
このコロナの影響で、日本での在留資格を有する外国人が再入国する場合の入国拒否が問題となっていましたが、先月28日に、出国日にかからわず再入国が原則として認められるようになりました。
わが国の在留外国人の数は過去最高を記録しており、今後は一層、在留外国人をユーザーとしたサービスを幅広く構築していかなければならないと思います。
司法もその例外ではありません。外国人が司法制度、とりわけ訴訟を提起しようと考えたとき、通訳人の存在が非常に重要となります。
すなわち、日本語が堪能な外国人であれば、弁護士と十分にコミュニケーションをとることができますが、そうでない場合、通訳人による通訳がなければ、法律相談からつまづいてしまうからです。
司法における通訳人問題は、以前から問題視されていました。
第一に、「司法通訳人」といった国家資格が存在しないという点です。
現在、裁判所では、裁判で通訳人が必要となった場合には、法廷通訳人名簿に基づいて選任していますが、その能力が必ずしも国家資格によって担保されていません。
もちろん、研修制度はありますし、優秀な通訳人の先生もおられますが、諸外国に比較するとやはり国家資格化していない日本は遅れていると思います。
第二に、通訳人費用をどうするかという点です。
一つの例を考えてみたいと思います。
飲食店で働くネパール人男性Aさんが熊本にいるとします。
Aさんは、日本に来て2年ほどで、日本語もあまり得意ではなく、ネパール語しか話せません。そんな彼が、残業代を支払ってくれない飲食店に対し、残業代請求を行うため原則3回の期日で終了する労働審判を提起しようと考えてます。
このとき、Aさんには通訳人が必要となりますが、そのためには裁判所に法廷通訳を依頼するか、自力で通訳人を探すしかありません。
しかし、ネパール語の通訳人は熊本にはほとんどいないため、裁判所に法廷通訳を頼むことにしました。すると、裁判所の名簿では、ネパール語の通訳人は関西にしかいないことがわかりました。
このような場合、通訳人の通訳料だけではなく、旅費もAさんが負担することになります。
そうなると、Aさんは、労働審判という司法サービスを受けることができないという結果が生じるのです。
この問題は、一見すると通訳料を誰が負わなければならないものかという問題のようですが、本質は、通訳人のアクセスのしにくさにあるように思います。
通訳料は、司法サービスによる利益を享受しようとするAさんが負わなければなりませんが、通訳人の旅費まで負担しなければならないのかは別議論だと思うからです。
「日本に来る以上は、日本語を話せるようになってからでないと来てはならない」という主張は、ある意味では正しく聞こえますが、社会はそのようにできていません。
日本語ができない在留外国人は想像以上に大勢いるのです。
日本語が話せる者も話せない者も自らの権利の救済や実現のため司法サービスを等しく利用できなければ、日本の国際化は遅れるばかりでしょう。
(追記)
出入国在留管理庁への申請取次も行っておりますので、ビザ申請のご依頼をお考えの方はご連絡ください。
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