2018年2月13日火曜日

留学の記憶(1)

弁護士の石黒でございます。

HPでも触れさせては頂いていますが、私には大学時代に1年間という短い期間ではありますが、アメリカの法学部に留学したという経験がございます。
正確にいうとアメリカには法学部というものはなく、法学準備コース(pre-Law)というカリキュラムを学ぶクラスにいたということになります。

授業内容は、日本の法学部と同じ、いや、それ以上の内容だったと思います。
留学生の私にとっては非常に刺激的な経験でした。
というのも、講義を担当するのは全て法曹資格を持っている先生ばかりで、毎回の課題は約40ページにもわたる判例の原文を読んで、次回の講義の教授からの質問に備えるというもの。
さらに授業中の発言がそのまま成績評価に繋がるので、決して気の抜けない日々でした。

また、カリフォルニア州地裁の裁判官の担当する刑法の講義では、実際に法廷傍聴をすると成績の加点事由になるため、車を持っている友人に頼み込んで、大学から遠く離れた裁判所にまで法廷傍聴に行ったものでした。
裁判が終わると、教授の裁判官室に通されて、当時カリフォルニア州知事だった(かな?)シュワちゃん(アーノルド・シュワルツネッガー)のサインを自慢げに見せてもらったのも覚えています。

とにかく予習・復習に追われる毎日で、大学の図書館で何度徹夜したことか(それくらい当時は毎日が新鮮で、バイタリティあふれていました。)。
もっとも、私のいた大学では考えられないことですが、私の他にも多くの徹夜組が毎日のようにいました。
「ああ、アメリカの大学生は遊んでばかりじゃないんだな」
と失礼ながらも思ったものです。

そんな毎日を過ごしていた私ですが、ある日こんなことがありました。
ビジネス法の講義の後に、教授に質問に行った時でした。
教授は、私に強い口調でこう言ったのです。

「なぜ授業中に質問しないんだ?」

私にとっては、
「こんな日本人留学生が訛りの入った英語で授業中に質問するなんぞ、周りの迷惑になるじゃないか」
と卑屈にも考えていたので、正直そんなこと言われても・・・と思いました。
しかし、教授はこう話を続けました。
「君の質問は素晴らしいのだから、授業中質問して他の学生と一緒に考えるべきだ」

少なくとも私のいた大学では授業中に学生が質問するなどあり得ないことでしたので、教授が私の質問を評価してくれたことに喜びを感じつつ、「これがアメリカ留学か」と衝撃を受けました。
それからは、私も脳みそをフル稼働しながら、積極的に発言するようになったのです。




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